雑誌『週刊現代』2014年2月8日号にて、建築家・伊東豊雄氏と中沢新一の対談が掲載されました。
新国立競技場に圧倒されようとしている神宮外苑の杜(もり)は、果たしてどのような歴史的文脈の中で作られ、維持されてきたものなのか。それは近代日本人の自然思想とどのような関係を持ち、「恐竜的建築」の計画遂行によって何が損なわれてしまうのかといった現在の問題が、多角的に論じられています。
【PDF】核心対談「欠陥だらけの新国立競技場」
人類学者 中沢新一 × プリッカー賞建築家 伊東豊雄
科学と伝統を結合しようという明治の技師たちや、全国から名木を献上する国民的運動に参画した人々の並ならぬ知恵と努力によって「東京のど真ん中」に作り出されることになった明治神宮。それは近代日本の矛盾や危機を乗り越えて伝統を再創造しようとする国民的運動のなかから生み出された、明治期を代表する「建築された森=杜」でした。1964年の東京オリンピックの開会式と多くの陸上競技がおこなわれた「国立競技場」(片山光生設計)は、言うまでもなく、人と自然が一体になったこの空間や、それを創設した歴史に対する責任を負った建造物として設計され、現在に至るまでスポーツや文化芸術の愛好家のために、繰り返し利用されてきました。
2013年に選出されたザハ・ハディドによる新建築案は、周囲の景観から浮いた巨大すぎる容積とデザイン、コンペ(公募)選出に至る手続きの不透明さ、調整を経ても更に当初の予定を遥かに上回る莫大な資金を要する予算面の問題などが、各方面から指摘されています。先述した対談の中では、「今の国立競技場の耐震性能を上げたうえで、オリンピック開催計画の条件を満たす8万人収容に足りない2万人分の仮設のスタンドを用意する」(伊東氏)、「これからの日本は自然や環境を破壊して新しいものを作るんじゃなくて、今まであったものを修繕していく。《作る》から《繕う》方向へ向かうしかない」(中沢)といった代替案や視点の転換の必要性が指摘されています。神宮創設の歴史的意義を考慮し、未来のエコロジー思想に寄与する責任ある判断をおこなっていくためにも、引き続き新国立競技場をめぐる議論の輪を広げましょう。
中沢新一による新連載「アースダイバーactive」もスタートしました(『週刊現代』2014.3.12号より)。
連載第一回から始まる「明治神宮アースダイバー」では、2020年東京五輪のメインスタジアムとなる「新国立競技場」(ザハ・ハディドによる建築案)の建設予定地となる明治神宮という空間を、その創設の経緯から根本的に検証しています。
『アースダイバー』の視点から問われる、これからの景観と建築の思想。ぜひご期待下さい。
グリーン・アクティブでは引き続きこの問題に注目し、「神宮の杜」についての情報を発信致します。
■参考記事
重要な問題提起を含む、建築家・槇文彦氏の論文を下記PDFで読むことができます。
ぜひお読み下さい。
・【PDF】新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える 槇文彦(JIAマガジン)
・特別寄稿 それでも我々は主張し続ける 新国立競技場案について 槇文彦(JIAマガジン 3/15号)